みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の末原 逸雄です。
私が6次産業化プランナーとしてここ数年農家の方々と接してきて思ったこと、感じたことを書いてみたいと思います。全国の農家を回ると一番目につくのが農地・耕作放棄地が非常に多いということです。
この写真は私の住んでいる近くの梨畑の休耕地です。
日本の食料自給率(カロリーベース)はオーストラリア(237)、カナダ(145)、アメリカ(125)、フランス(122)、スペイン(89)、ドイツ(84)イギリス(70)、イタリア(62)、日本(40)と主要先進国の中で最も低い状態が続いています。原因としては1戸当たりの経営面積が他国に比較して極端に狭く、そのために生産性が低くなり、結果として競争力が乏しいところにあります。
もう一つの原因として荒廃農地の発生原因は、「高齢化、労働力不足」が最も多く全体の23%、次いで「土地持ち非農家の増加」が16%、農産物価格の低迷が15%となっています。
2010年、日本の耕作面積は459万haであり、ピーク時(1961年)の609万haに比べて約25%減少しています。減少した原因は、経済成長期に住宅地、工場用地への農地の転用と米の生産調整による水田の減少、麦・養蚕・果樹園の減少の為である。しかしバブル崩壊後、工場の海外移転が進むにつれて工場用地への転用は少なくなった。なお、耕地利用率は裏作の減少や生産調整の拡大により、ピーク時の(1956年)138%に比べて92%と大きく低下しています。2010年の耕作放棄面積は40万haで埼玉県の面積にほぼ匹敵しています。
食料自給率が低迷する日本において、貴重な国土が有効に使われないことは大きな問題であると思います。
耕作放棄地の面積とその推移(参考)
参考:荒廃農地の現状と対策について(令和2年4月)(農林水産省)
もう一方で農業従事者の年齢構成が他の産業と比較し非常に高いということです。
第1次産業では,60~64歳が14.9%,65歳以上が45.8%と,60歳以上が6割を占めているのが実態です。このままの推移で行くと数年後には69歳以上が7割を超えていくことは明らかです。農業は儲からないということで若い人たちの農業参入者が他産業と比較し非常に少ないことが大きな要因となっています。
農業従事者の高齢化率6割、農家の半分は赤字経営、800円のざるそばのうち農家に支払われるそば代は60円、今世紀に入って米の国際価格は5倍、食料自給率は40%にも関わらず農地は減り続けている現実。日本の農業は危機的、世界の食糧事情は激動期である。日本の農業に未来はあるのか。地域から日本の農業を変える必要があると感じています。
農業を始めるにあたって問題なのは、新規就農のためのハードルの高さです。まず農地の確保が難しく、何らかのツテがなければなかなか農地を使うことができません。なんとか農地を確保できても、今度は水利権で頭を悩ませる必要があります。
農業を始めるための農具や農業用機械の導入も大変です。多額の費用がかかる機械もたくさんあり、身内から譲ってもらうなどでなければ新規就農者には入手が困難なものもあります。なんとか農業を始めても、すぐに収入が発生するわけではありません。
農作物を育てる時間が必要ですし、収穫した農作物の販路を確立しなければ現金収入を得られないのです。その他、農業には様々な名目で維持費が必要となってきます。種や苗の代金はもとより、農薬や肥料代、農法によってはハウスの光熱費などが重くのしかかってきます。
さらに、農家同士の付き合いという心理的なハードルもあります。農業はある程度地域で助け合いながら行う側面があります。新規就農者に対して冷たい態度で接する既存農家もおり、いわゆるご近所トラブルが発生する可能性もあるのです。
しかしながらここ数年産地を回っていると、若い人たちがIT技術を駆使した農業経営に取り組む人たちも少しずつ増えてきました。農業を個人で行うのではなく法人化することで売上、利益を出しているところもあります。こういう成功事例を広げることにより若い人たちが今までと違った農業経営に参画していき儲かる農業にしていくことが日本の農業には大切なことかもしれません。国民が農業から離れた結果、農業に関する問題が他人事のようになってしまい、問題の存在自体が認識されなくなっているという現状さえあります。農業の問題は食の問題であり、人間は食べなくては生きていけません。私達日本人は農業に関する問題をより深刻に捉えなければならないのです。
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執筆者
末 原 逸 雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 理事
40年間流通業に携わり、大手量販店の店長、販売部長、バイヤー、商品部長、スーパーバイザー部長、販促部長、営業部門もすべて経験。現在は食の6次化プロデューサー、6次化プランナー、JGAP指導員として、全国各地の農産物、水産物のマーケティングブランディング、販路拡大に従事している。