食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は病原微生物対策について解説します。 

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。

いよいよ来月から改正食品衛生法が完全実施となりますが、皆様のご準備は順調に進んでいるでしょうか?
衛生管理は3つのハザード(生物的・化学的・物理的)に対してどう対策をしていくか?にかかっています。そこでその9割を占める生物的ハザード=病原微生物に対しての3つの対策を本稿でご説明したいと思います。

0:ハザードの3つの種類のおさらい

HACCPの一文字目にあるHはhazard(ハザード:危害要因)の頭文字のHです。この危害要因には3つの種類があり、それぞれの詳細は以下になります。

① 生物的ハザード:有害な微生物(病原微生物)の増殖によって食中毒の原因になる危害。ノロウィルス・サルモネラ・O-157、カンピロバクター等がその具体的な例。

② 化学的ハザード:天然のアレルギー物質と人工があり農薬や洗剤・殺菌剤などによる危害。ヒスタミンやカビ毒・キノコ毒や重金属、使用基準超過の添加物、酸化した油脂、等がその具体的な例。

③ 物理的なハザード:混入することでケガなので健康被害を引き起こす危害。金属や石・貝殻・ガラス等がその具体例

これらのハザード(危害)のうち、食中毒の約9割が生物的ハザードである病原微生物由来のものになります。そこでこの生物的ハザードへの3つの対策(持ち込まない・増やさない・やっつける)をご紹介します。

1:持ち込まない(つけない)

外部から最も持ち込むものは食材の仕入れです。安心できる業者から仕入れ、必要に応じて検査証明書をもらいましょう。また容器等の汚れや破損の確認は受入の段階で確認をすることも肝要です。それ以外は従業員から病原微生物(特にノロウイルス)が持ち込まれないように、普段からの健康管理と作業手順の順守、さらに適切な手洗い・清潔な作業着着用やマスク・手袋等の頻繁な取り換え、これらにも留意しましょう。また、施設や器具の掃除やシンク等洗浄や冷蔵庫での適切な保管方法、また殺菌消毒も普段からおこなうことにより、交差汚染(2次汚染)を防ぐことができます。

2:増やさない

病原微生物を増殖させないためには、栄養分・水分・温度と時間・PH調整のこの4つを管理することで対応が可能です。病原微生物の中には耐熱性の芽胞形成病原菌(セレウス菌・ウェルシュ菌・ボツリヌス菌、等)があります。これらは水分活性(砂糖や食塩濃度)、PH調整剤や温度で増殖を抑え込むことになります。また、上記1の「持ち込まない」と同様に従業員による注意や施設や器具を清潔に保つことも重要です。

3:やっつける

殺菌消毒がここに当たります。現場で現実的対応からすれば、加熱殺菌が一番多いやり方になります。加熱殺菌の基本は食材の中心温度が75度以上で1分以上の加熱で死滅をしますが、ノロウイルスは85度から90度で90秒以上の加熱が必要になります。また、加熱をしない生野菜などは、希釈した次亜塩素酸ナトリウムで病原菌を殺すといった対応になります。

一般にHACCPでは1の管理コストでトラブルがあった際の100の費用の流出を防ぐことができるとされています。これらの生物的ハザードへの対策をきちんと実施することで、お客様だけでなく自社・自店を守ることになるので、しっかりやりましょう。

一般社団法人食品経営支援協議会では、このHACCPへの理解を深めるためのマイスター習得セミナーを含めた様々研修やセミナーをご提供しています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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