食品経営支援協議会の専門家によるコラム。厚労省が発表している制度化への考え方について解説します。

 

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。

食品衛生法が20186月に大きく改正され、「HACCPに沿った衛生管理の制度化」は今年の6月から施行、20216月から完全実施となります。そこで、厚生労働省がこの制度化に向けてQ&Aを作成し発表しています。
本ブログでは、その中から主なものを数回に分けてご説明します。1回目はQ&Aの説明の前に押さえておきたいこと、Q&Aの項目、そして「I:制度全般」について触れていきます。

Q&Aの説明の前に押さえておきたいこと

改正された食品衛生法での主なポイントは以下です。
1:HACCPに沿った衛生管理の制度化
2:営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し
3:食品のリコール情報の行政報告の義務化
4:特定成分等を含む食品の健康被害情報の届出義務化
5:食品用器具・容器包装にポジティブ制度導入
6:広域におよぶ食中毒への対策強化
7:輸出入食品の安全証明の充実
この最初にあり一番インパクトのあるもが「HACCPに沿った衛生管理の制度化」です。事業者はそれぞれの規模や業種などに応じてHACCPに沿った衛生管理を実施しなければなりません。

厚生労働省からは、「食品衛生法等の一部を改正する法律では、原則として全ての食品等事業者の皆様に HACCP に沿った衛生管理に取り組んでいただくことが盛り込まれています。ここでは、HACCP に沿った衛生管理の制度化に関してよく寄せられる質問にお答えします。」ということでQAが発表されました。

Q&Aでの項目はどんなものがあるか

このQ&Aでは以下のような項目で細分化されており、それぞれ数問の質問と回答になっています。また事業者から寄せられた質問(合計34問)以外にも都道府県等から寄せられた質問(4問)も掲げられています。

○制度全般について(全6問より要点抜粋)

今回の食品衛生法改正により、食品等事業者は衛生管理に関して、①衛生管理計画の策定と周知徹底、②公衆衛生上必要な措置のために手順書を必要に応じて作成、③衛生管理の実施状況を記録し保存、④計画と手順書の効果の検証と見直しの実施、といったPDCAを回すことを求めています。

また何か特別なことをするというよりも、個々の事業者が使用する原材料、製造・調理の工程等に応じた衛生管理となるよう計画の策定と記録保存を行い「最適化」「見える化」をするように指摘があり、小規模事業者には手順を定め簡便な記録をするといった比較的容易に取り組めることも言及しています。また誤解が多くあるHACCPは設備施設といったハードへの整備でなく、工程管理といったソフトの基準であることも明確に指摘しています。

以前基準である「基準A」と「基準B」をそれぞれ「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」と言い換え、企業規模や業種に準じた選択肢を示しています。そしてそこで達成される水準(レベル)に関しては、厚労省令に定める基準に従い、事業者が順守すべき措置を自ら決めるもの、と定義しています。それ故に、食品衛生責任者又は食品衛生管理者以外には、特別に新たな有資格者の設置は不要であるとしています。またこの衛生管理に関する制度は、令和3年から本格施行されることも明記しています。

制度全般への説明は以上ですが、いかがでしたか?自主責任のもと衛生管理計画と手順に対して、基準を設け見える化をしながら運用していく、即ちPDCAを回していくといった流れになっております。「実際には、分かっているけどできない」といった現場の声も聞こえてきそうですが、「凡事徹底」を組織でおこなうことはなかなか難しく、必要に応じて専門家や第3者を交えた対応で、適切な運用をしていくことも一つの答えになります。

一般社団法人食品経営支援協議会では、事業者の販路開拓に向けた「自店や商品のブランディング」から海外展開に至るまでのコンサルティングも可能です。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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