食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は、中小企業診断士の光武 晋一FMSC講師による実際の居酒屋を事例とした、テイクアウトをする際のポイントのご紹介です。

 

みなさんこんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)講師の中小企業診断士 光武 晋一 です。

私も焼鳥屋を経営しており、今回のコロナウィルスの影響で現在も店舗は休業状態となっております。多くの飲食業に携わる皆様が同様の状況であると存じますが、そのような中で生き残りをかけて今までやっていなかったテイクアウトの開始など、何とかしようとしているお姿には頭が下がる思いです。

今回は飲食店がテイクアウトメニューを始めるときに気を付けるべきことをお伝えしたいと思います。飲食店がテイクアウト業態を取り入れることは大賛成です。私の店でもテイクアウトやっております。しかしながらテイクアウトは店内飲食とお客様が食べるタイミングが違うため、細心の注意が必要になってきます。特にこれから気温と湿度が高くなり、食中毒が起こりやすい時期ですので、しっかりとした衛生管理は不可欠になります。そして、調理手順による衛生管理はもとより、法律でも様々な規定がされています。今回はそのポイントについてお伝えします。

まずはそもそもの話となりますが、飲食店としての営業許可は注文された品をその場で調理して提供することがベースになっています。みなさまご存じの通り、店内でもこれからの時期は火入れ・冷却等々、食材の温度管理は必須です。そして、店内であれば注文をいただいてから調理・提供し、温かい・冷たい料理を適温のうちにおいしく食べてもらいます。ところがテイクアウトの場合、お客様の購入と食べるタイミングの差により、食中毒になるリスクが広がるため注意が必要です。意識するべき衛生管理の違いがここにあります。ここについて、法律においても食の安全を趣旨としたルール作りがされています。飲食店の営業許可は、その場で食べることでの許可の取得となります。持ち帰りを前提とした商品の販売については、その食材の特性により販売業や製造業の免許が必要となってきます。

・基本は飲食店で提供しているメニューを、その場で作って提供する。

食事の提供は、飲食店としての営業許可がベースです。作り置きはせず、なるべく早く食べてもらうように伝えましょう。あくまで飲食店の延長としてのテイクアウトを意識しましょう。
そしてテイクアウト用の器や盛り付け方について、しっかりした温度管理、生野菜と白米の接触など食材同士による汚染の影響に気を配ることで、よりおいしく、より安全な料理の提供が可能となります。

・その場で調理したもの以外の販売は問題になる可能性あり。

生の肉や魚のテイクアウトの場合、販売業や加工業の許可が必要です。制度をわからないまま刺身や生肉などを単品で提供しないように気をつけましょう(わかりづらいのですが、刺身はNGで刺身をご飯に乗せた海鮮丼はOKなどがあります…)。また、乳製品、肉や魚の加工をしての提供にも製造許可が必要になる場合があります。自家製ソーセージやチャーシューなどの提供方法にも気をつけましょう。その他、麺製造や料理の冷凍販売など、いろいろな許認可がありますので、その場で調理するもの以外のまとめてつくり置いた食材などの販売の際はネットでサッと調べましょう。
農産物の販売は基本的には大丈夫ですが、やはり販売する前には簡単でよいのでネットで調べることが、経営の安全の確保につながります。
お酒のテイクアウトでの提供は飲食店営業許可ではできません。しかし、コロナ対応の一環で期限付きの特例免許の付与が受けられます。酒類をテイクアウト販売する際は、国税庁のホームページから申請書類をダウンロードして記入し、郵送やe-taxなどで所轄の税務署に提出しましょう。

・店頭以外での販売はとてもややこしい!

ご自身のお店の店頭以外での販売をしようとすると本当に大変なことが多いです。まず食品表示法への対応が必須です。そして、ネット販売などの通信販売をするなら特定商取引法による表示義務があります。
せっかく新しいテイクアウトという事業に踏み出したとしても、そこで食中毒をだしたり、法令違反で行政指導が入ったりなどありますと、本業の店舗経営にも大きな影響があります。法令も食の安全のために作られているものですので、きちんと理解して守っていくことが事業を継続するためには必須です。東京都福祉保健局のホームページ上で、「テイクアウトや宅配を始める飲食店の皆さんへ」といった記事があるので、是非とも参照にしてください。

一般社団法人食品経営支援協議会では、このような経営の問題発見・課題解決につながるコンサルティングが可能です。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

光武 晋一
一般社団法人食品経営支援協議会 講師
中小企業診断士  / 経営コンサルタント  / 独立行政法人中小機構人材支援アドバイザー / 情報処理安全確保支援士

システムエンジニアとして活動後、炭火焼鳥居酒屋を開業し、飲食店での販売促進、集客力向上、Webの活用、衛生管理を実践。中小企業、商店街と地域商業の活性化、創業者の支援へ携わる。

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