食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は国際的な基準であるHACCPが誕生して世界的に認知されていく流れをお伝えします。

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。

みなさん、こんにちは。FMSCの秋島一雄です。今年の6月から完全実施となる改正食品衛生法の肝である「HACCPに沿った衛生管理の制度化」、そのHACCPとはそもそも何かという点に関して、お伝えしていきます。
今回は国際的な基準であるHACCPが誕生して世界的に認知されていく流れをお伝えします。

そもそも食品の衛生をしっかり担保しないと大変なことになる、それを国家プロジェクトとして考えたのが、米国での宇宙食の安全性の確保でした。そのために、どのようにすれば、食の安全に万全を期することができるか?最終製品での検査ではなく、予防的にできないか?といったHACCPの考え方の源流ができてきました。

一方、国際機関では、FAO(国際連合食糧農業機関)WHO(世界保健機関)によって合同で、国際的な食品規格をつくること1962年に決め翌年に第一回目の会議がローマで開催されました。この食品規格計画の実施機関が食品規格委員会(別名コーデックス委員会)で、現在でも国際的に通用する食品規格は、この規格だけでコーデックス規格と言われています。

そして、 1970年代初めに、HACCPの骨格となる3つの原則ハザード分析必須管理点=CCPモニタリング)ができ、さらに米国の食品医薬品局(FDA)HACCPの概念をとりいれた「低酸性缶詰食品」の規制を開始しました。
その後、1980年代前半にマクドナルドで複数の州でのO-157による食中毒が発生し、売上を大幅に減らし回復には長期間かかる、という事件もありました。その結果、1989年に米国食品微生物基準諮問委員会(NACMCF)は,HACCPの基本的な考え方を整理した上で体系化してHACCP7原則を作成しました。この考え方はFAO/WHO合同の食品規格委員会(コーデックス)における国際標準化作業の原形となり,1997年まで用語等の整理が引き続いて実施されNACMCF、コーデックス共に左図の7原則を確立に至りました。またこの年に、州を越えて取り引きされる水産食品、食肉・食鳥肉及びその加工品、飲料について、順次、HACCPによる衛生管理を義務付けることとなりました。

欧州では、1990年代に食中毒を起こしやすい水産物へのHACCP規制のあと、2006年から食品事業者はHACCP の実施が義務付けられました。但し、小規模事業者に対して弾力的運用が認められています。それ以外の国で日本との貿易が多い、オーストラリアやカナダ、さらに韓国や台湾でも順次HACCPの義務付けを進んでいます。今後も食のグローバル化がより進むことが想定され、食品の安全を取りまくHACCPの義務化が世界中のベンチマークとなってきています。

日本は先進諸国と比べて、食の安全の国際基準(HACCP)から遅れているのが現状です。国際的なルールとして、衛生管理の内外無差別(国内品も輸入品も同じような衛生管理を要求すること、科学的根拠なしには輸入品だけ厳しい規格を適用することはできない)の観点があります。つまり、輸出先の衛生管理をクリアしないと、日本から食材を輸出できない状況になっています。また日本産の食品は安全で輸入品にはしっかりと衛生管理という不平等もおかしいという状態です。そのような意味で、2021年から日本でのHACCPに沿った衛生管理の制度化の流れも自然と言えると思います。

一般社団法人食品経営支援協議会では、様々な事業経営に関しての研修やコンサルティングを含めたトータルなご支援をおこなっています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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