みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の山口 幸三です。
前回は「肥沃な土」について微生物(細菌やカビ)の観点から説明しました。今回は植物の病気について微生物の観点から解説していきます。
人が結核菌などの病原菌に感染すると健康を害するのと同じように、植物も病原菌に感染して生育できなくなったり枯れたりすることがあります。例えば、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)という病原菌がいます。この細菌に感染した植物は表面に複数の斑点ができてしまい、正常に生育できなくなってしまいます(下の写真のような植物を目にしたことがあると思います)
写真は農研機構HPより
ただ、植物に害を与える病原菌ばかりではありません。ビフィズス菌や乳酸菌が人の健康にとって有益なように、植物にも有益な細菌がいます。そして、それらの細菌は病原菌の感染を防いでくれるのです。例えば、スフィンゴモナス(Sphingomonas)という細菌がいます。この細菌がシュードモナス・シリンガエの病原性を抑えてくれることが実証されています。スフィンゴモナスは植物の表面にいる常在菌なので、まさに植物を病原菌から守ってくれる守り神といえますね。
ただ、農薬を濫用するとこのような有益な微生物まで殺してしまいます。そうすると、元の健全な環境に戻すのに苦労することになります。農薬は即効性があり病原菌を速やかに除去してくれますが、濫用は避けたいところですね(人間も抗生物質を飲みすぎると腸内環境が悪くなって病原性の高い感染症にかかることがあります。それと同じです。)
このように、微生物の中には植物を病原菌から守ってくれるものがいます。前回の「肥沃な土」にも共通しますが、微生物が農業に与える影響はとても大きいんですね。微生物は目に見えないため、普段は意識することはないと思いますが、私たちの生活にしっかりと根付いているのです。
一般社団法人食品経営支援協議会では、HACCPの導入前の研修から、計画の策定とモニタリングを中心とした運用に関して、トータルなご支援をおこなっています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/
執 筆 者
山 口 幸 三
一般社団法人 食品経営支援協議会 理事
上級HACCPコーディネーター / エキスパートファスティングマイスター
大学・大学院・製薬会社勤務時代の15年間、一貫して微生物の研究に従事。腸内細菌や食中毒原因菌など幅広い微生物に関する専門知識を有する。製薬会社を退職後は、健康管理や食品衛生に関する法人を設立。専門的な内容をわかりやすく伝えるセミナーには定評がある。
★食品経営支援協議会では、経営のお悩みの解決につながるコンサルティングが可能です。お気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらから