みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島 一雄です。
2021年6月まであと3か月と少しになってきました。まだまだコロナ禍の影響は甚大という環境下ですが、6月には「HACCPに沿った衛生管理」の制度化が昨年6月からの1年の経過措置を経て、完全制度化されることになります。そこで、本稿では、厚労省が発表している「HACCPに沿った衛生管理」の制度化への考え方とその前の前提条件となる「一般的な衛生管理」の基準に関して、お伝えします。
1:厚労省による「HACCPに沿った衛生管理」とは
厚労省からは、食品の製造・加工・調理・販売等といったすべての食品等事業者に対して衛生管理計画の作成を指示しています。そこでは、コーデックス(FAO:国連食糧農業機関とWHO:世界保健機構が合同で設立した世界の食品規格)の「HACCPに基づく衛生管理」と小規模な事業者にはその簡素化された衛生管理「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」をしなければなりません。そこでの考え方は、厚労省の発表をそのまま引用しますとは以下になります。
①「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
②必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
③衛生管理の実施状況を記録し、保存する
④衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す
2:一般的な衛生管理
上記の①にある一般的な衛生管理に関し、ここで取り上げてみます。多くの事業者は「HACCPに沿った衛生管理」にばかりに気を取られていますが、衛生管理の基準には2つあり、その一つである「一般的な衛生管理」もしっかりと押さえておましょう。
- 食品衛生責任者等の選任:責任者の指定とその責務
- 施設の衛生管理:施設の清掃・消毒・清潔保持、等
- 設備等の衛生管理:機械器具の洗浄・消毒・整備・清潔保持、等
- 使用水等の管理:水道水又は飲用に適する水での水質検査、貯水槽の清掃、殺菌、等
- ペストコントロール(ねずみ及び害虫を含めた虫への対策):駆除作業や防除措置、等
- 廃棄物及び排水の取扱い:廃棄物の保管・廃棄、廃棄物・排水の処理、等
- 食品等を取り扱う者の衛生管理:従事者の健康不良の把握と対策や服装・手洗、等
- 検食の実施:大量調理施設における検食実施、等
- 情報の提供:製品に関する消費者への情報提供、健康被害の保健所等への情報提供、等
- 回収・廃棄:製品回収の必要時の実施方法や報告、責任体制等と消費者への注意喚起
- 運搬:車両類の清掃・消毒や運搬中の温度・湿度・時間の管理、等
- 販売:適切な仕入れ量、販売中の製品の温度管理、等
- 教育訓練:従事者の教育訓練とその効果検証、等
- その他:仕入先や販売先の記録作成・保存、製品の自主検査の記録の保存、等
数だけ見るとこんなにたくさんという感じをしますが、内容を吟味してみれば、ある意味、基本的なことばかりで、極めて当たり前と皆様も感じられると思います。いずれせよ、「HACCPに沿った衛生管理」をする土台に、この「一般的な衛生管理」があります。またこの両方をカバーした手引書が、業界ごとに作成されていますので活用をご検討ください。(これらは、厚労省のホームページに記載されています)
また、ご参考までに東京都の福祉保健局が「衛生管理ファイル」(衛生管理計画と記録表)を提供しています。これは厚労省が認めているものでもあり、事業者の方によっては、これをそのまま利用という方もいらっしゃいます。(勿論、東京都以外の事業者が利用しても問題はありません) これも一度目を通して、そのまま活用できるのであれば、ご利用するのも一案です。
一般社団法人食品経営支援協議会では、様々な事業経営に関しての研修やコンサルティングを含めたトータルなご支援をおこなっています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/
執 筆 者
秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士 / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師
総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。