みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島 一雄です。2021年6月1日より完全施行される改正食品衛生法は、以下の7つのポイントがあります。本稿では、その2番目である「営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し」に関して触れていきます。
「2021年6月より完全施行の改正食品衛生の7つのポイント」
1:HACCPに沿った衛生管理の制度化
2:営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し
3:食品リコール情報の行政報告の義務化
4:特性成分等を含む食品健康被害情報の届出義務化
5:食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度導入
6:広域におよぶ食中毒への対策強化
7:輸出入食品の安全証明の充実
営業届出制度の創設
今回の改正食品衛生法に合わせて、全ての食品等事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が必要になります。そしてその管理の実施状況を確認するためには、そもそも対象事業者の把握が必要になります。そこで、2021年6月1日より後述の一部の届出対象外の営業者を除いて、管轄の保健所に届出、もしくは「食品衛生等申請システム」を通じて届出、をする必要があります。(このシステムは2020年7月より運用が開始されていますが、この営業届出に関しては2021年6月から運用開始の見込みです。詳しくは以下のサイトをご覧ください)
https://ifas.mhlw.go.jp/faspub/_link.do
(食品衛生等申請システムから) |
営業届出は営業許可とは異なり、要件(施設基準)はなく、また更新の必要もありません。但し、廃業した場合は届出をする必要があります。
営業届出が不要な対象業種
営業届出は基本すべての事業者に対して公衆衛生に与える影響が少ない(食品衛生上のリスクが低い)営業として規定されている以下の業を営む者については、営業の届出は不要です。
①食品又は添加物の輸入業
②食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業
(ただし、冷凍・冷蔵倉庫業は除く。)
③ 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品
衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品の販売業
④ 合成樹脂以外の器具容器包装の製造業
⑤ 器具容器包装の輸入又は販売業
⑥学校・病院等の営業以外の給食施設のうち、1 回の提供食数が20 食程度未満の施設や、農家・漁家が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)も、営業届出は不要
営業許可制度の見直し
現在の保健所に届け出をして営業許可を取っている業種は、34の業種(2つの調理業・22個の製造業・5つの処理業と5つの販売業)となっていますが、これは昭和47年(1972年)以降に見直しがされておらず、実態に即していないとの声も少なくありません。そこで、食中毒等のリスクや過去の発生状況、規格基準の有無、等を踏まえて、現在許可業種の再編に着手しています。その見直しは、「原則、一施設一許可」として、一つの許可業種で取り扱える食品の範囲の拡大、原料や製造工程が共通する業種の統合をしています。
この営業許可で申請する事項は以下になっています。
① 申請者の情報 ② 施設の所在地 ③ 営業の種類/形態/主として取り扱う食品等の情報
④ 食品衛生管理者又は責任者の氏名と資格の種類、等 ⑤ 施設の構造や設備の図面
⑥ HACCPに沿った衛生管理の取り組みの種類(「基づく」か「考え方を取り入れた」の違い)
この見直しの結果、許可業種の名称や区分の変更、新たな営業許可の対象となるもの、対象が外れて許可が不要で届出だけで良いもの、これらが存在することになります。また、施行日(2021年6月1日)に従来の許可期間が残っている場合もあるので、経過措置が設けられています。ただ留意点として、この経過措置の有無にかかわらず、「HACCPに沿った衛生管理」は実施していく必要はある、ということです。因みに、この営業許可の申請も「食品衛生等申請システム」の利用は可能になっています。
一般社団法人食品経営支援協議会では、このHACCPへの理解を深めるためのマイスター習得セミナーを含めた様々研修やセミナーをご提供しています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/
執 筆 者
秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士 / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師
総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。