食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は生物的ハザードである病原微生物について解説します。 

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。

改正食品衛生法が完全実施となって1か月が過ぎました。皆様の衛生管理への準備は順調に進んでいるでしょうか?本稿でそもそも病原微生物とは、ということで主なものの原因・症状・対策を挙げたいと思います。

1:病原微生物の食品衛生管理での2つ分類

病原微生物の分類方法はいろいろとありますが、を健康被害(食中毒を起こす)際の対応を勘案した切り口で分類すると、①増殖して食中毒を起こす、②汚染だけで食中毒を起こす、の2つに分類できると思います。
それぞれ主な病原微生物は①サルモネラ・リステリア・黄色ブドウ球菌・腸炎ビブリオ・ウエルシュ菌・セレウス菌などがあり、②は病原大腸菌(O-157)・カンピロバクター・ノロウィルスなどがあります。増殖させないためには、特に危険な温度帯と言われる(活発に増殖する20℃~50℃、通常の増殖する10℃~65)をできるだけ避けるために、喫食は製造後2時間以内や冷却は1時間以内に10℃以下に保存することが必要になります。また工場での室温は20℃以下が望ましいとされています。ただ10℃以下でも増殖のスピードが遅くなるだけで、完全に安心はできませんことも理解しておきましょう。

2:食中毒で多い病原微生物の特徴と対策

 右図は厚労省の「食中毒統計調査」のグラフです。このグラフからでは、直近の数値(2018年 平成30)では①カンピロバクター ②ノロウィルスがダントツに多く、以前多かった③サルモネラ菌や④腸炎ビブリオおよび⑤病原大腸菌(O-157・他)は激減しております。これら主だった5つの特徴と対策を、簡単にご説明します。

  • カンピロバクター

原因:十分に加熱されていない肉(特にとり肉)や、飲料水、生野菜などが原因で感染
症状:食後27日で、下痢・発熱・吐き気・腹痛・筋肉痛などの症状
対策:乾燥に弱く、加熱(75℃を1分間以上)すれば菌は死滅

  • ノロウィルス

原因:貝類の加熱不十分、人や水などウイルスに汚染(おせん)状態から感染
症状:食後12日で、吐き気・下痢・腹痛などの症状
対策:熱に弱い(8590℃で90秒以上)ので加熱、また人から感染予防の手洗い

  • サルモネラ菌

原因:十分に加熱していない卵・肉・魚などが原因、動物を介して感染もある
症状:食後、6時間~48時間で、腹痛・吐き気・下痢・発熱・頭痛などの症状
対策:乾燥に強く、熱に弱く加熱(75℃を1分間以上)とねずみや虫への対策

  • 腸炎ビブリオ菌

原因:生魚や貝等の魚介類が原因、塩分のあるところでは増殖速度が速い
症状:食後4時間~96時間で、吐き気・下痢・腹痛・発熱などの症状
対策: 真水に弱く水道水での洗浄、また、熱に弱い(60℃で10分以上加熱)

  • 腸管出血性大腸菌(O157、O111など)

原因:加熱不十分の肉や生野菜、井戸水などの汚染された水
症状:食後1260時間で、はげしい腹痛、下痢、血便などの症状、最悪は死亡も
対策:加熱(75℃を1分間以上)と洗浄および生肉を使う調理器具の分別

これらの病原微生物に対して、微生物を持ち込まない・食品につけない・食品中の微生物を増やさない・加熱等の対策でやっつける、これが食中毒への予防になります。それぞれの病原微生物の特徴を知り、対策を施していきましょう!

一般社団法人食品経営支援協議会では、このHACCPへの理解を深めるためのマイスター習得セミナーを含めた様々研修やセミナーをご提供しています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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