みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島 一雄です。
引き続き、HACCP12手順の簡単な考え方をご紹介していきます。今回は4回目で、HACCP7原則の前手順にあたる「手順4」です。手順2と手順3が1つのセットとなっていたように、手順4と手順5もセットになっておりますので、是非とも次回の手順5と合わせて参考にしてください。
手順4 製造工程図(フローダイアグラム)の作成
原材料の受入から最終製品の出荷に至るまでの製造工程の流れを図にしたものを製造工程図(フローダイアグラム)と呼びます。原料の受入から出荷までの工程の流れが分かり、その後の危害要因(ハザード)分析を実施する基礎となります。時系列順に工程を書き出して、製造工程図を作成していきましょう。なお、簡単な製造工程図一つの例を掲載します。次の手順5でも参考例を掲げていますので、ご参考にしてください。
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製造工程図の作成時での留意点
作成時の目標として、前回の手順3で「製品説明書は、新入社員や製造部門以外の方でも、それを見れば管理ができる」でした。それと同様にこの製造工程図も「直接的にその作業に関わっていない人でも理解できる」というレベルでの作成を目標としましょう。
では、この手順4の製造工程図を作成手順に沿って、留意点を上げてみます。
- 原材料の記載とその受入:製品を構成するすべての材料について、受け入れから書き出していきます。原材料・添加物以外に使用する、水や氷そして包装材の記述も必要です。これらのリストアップしたものを一番上に書いてから、下に向って工程を書いていきます。
- 工程図の流れの把握:受入後に保管や検品があり、その後には製品ごとのそれぞれの製造工程があります。(例えば、皮むき・原料切断などの下処理工程、原材料・添加物の計量工程、加熱・煮沸や原材料を混ぜるといった加工工程、出荷のための梱包工程、といった実際の製造の流れに合わせた製造工程図を作成しましょう。また、その工程毎に通し番号を振っておく方が、整理がしやすくなります。
施設図面
以上の説明は、製造工程図の作成手順ですが、施設図面やさらに人の流れも把握できるような動線図もあれば、より効果的な衛生管理ができます。扱う製品が衛生管理上デリケートな場合には、動線(人・物・空気の流れ)が記載された施設図面も作成しましょう。
施設図面では、3つの分類「清潔区域」「準清潔区域」「汚染区域」の色分けもしましょう。
清潔区域は、加熱した後の製品を扱う重要な場所(充填・包装工程など)で、病原微生物の汚染を完全に防がなければならない場所です。
準清潔区域は、計量・加工(調理)工程・金属探知機工程をおこなう場所で、病原微生物の汚染をコントロールしながら作業する場所になります。
汚染区域は、原材料等の受入・保管・下処理工程と包装後の梱包工程をおこなう場所で、病原微生物への高い衛生管理が求められない場所になります。
※注意:区域区分は、施設・原材料・製品の特性によって、同じ名前の工程でも区域分けが変わります。
危害防止基準の記載
加熱や冷却の温度やその時間(長さ)やPHの値、作業方法など、製造工程図に記載していない詳しい衛生管理上の情報は衛生管理の基準として、別に「プロセス(工程)の記述」という書式を用意して作成しましょう。(書式は自由です)
工程ごとの詳しい記述があると、HACCP原則1の「危害要因分析」を作成する時にとても役立ちます。
※注意:製造工程図の各工程に上記の詳しい情報を書き込むと、全体が見えにくくなり、製造工程図の目的「製造工程の流れが一目でわかる」が損なわれます。また工程を見直して変更する際にも、手直しが大変になります。
ただし、製造工程図にシンプルな記述(清潔区域などの区域区分、重要な衛生管理の基準)だけを加えることは、OKです。
上記を作成していくことで、製造の全体像が見えてきます。また、慣れてくれば製造工程図を見るだけで、重要な管理ポイントが分かってくるようになります。
一般社団法人食品経営支援協議会では、HACCPの導入前の研修から、計画の策定とモニタリングを中心とした運用に関して、トータルなご支援をおこなっています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/
執 筆 者
秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士 / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師
総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。