食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回はポジティブリストについてお伝えします。

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。

2021年6月1日より完全施行される改正食品衛生法には、以下の7つのポイントがあります。先週はこのうち2番目の「営業届出と営業許可」に関してでしたが、今回は5番目にある「ポジティブリスト制度導入」に関して触れます。このポジティブリストに関しては、現時点で合成樹脂となっているので、では現在使用中のガラス容器はどうなるのか?といったご質問も多く、この点を含めて本稿でご説明したいと思います。

「2021年6月より完全施行の改正食品衛生の7つのポイント」
1:HACCPに沿った衛生管理の制度化
2:営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し
3:食品リコール情報の行政報告の義務化
4:特性成分等を含む食品健康被害情報の届出義務化
5:食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度導入
6:広域におよぶ食中毒への対策強化
7:輸出入食品の安全証明の充実

1:ネガティブリストからポジティブリストへ

まず言葉の確認からですが、ネガティブリストというのは、「容器等で使用できる物質は禁止されているもの(ネガティブ)以外は、すべて使用は許可」という考え方です。例えば海外で何らかの使用が禁止されている物質でも、ネガティブリストに入っていない限り直ちに規制できないといったデメリットがあります。一方、ポジティブリストは、「容器等で使用できる物質は安全確認ができたもの(ポジティブ)以外は、すべて使用は不可」ということになります。

なんだか、ポジティブリストの方が語感的には前向きですが、運用にはポジティブリストの方は「原則ダメ許認可されたものだけがOKなのでより厳しい(管理が厳格)になります。

これにより今回の変更の趣旨である「食品用器具・容器包装の安全性や規制の国際整合性の確保のため、規定が定まっていない原材料を使用した器具・容器包装の販売等の禁止等を行い、安全が担保さえたもののみ使用できることとする」となります。
現在、食品用器具・容器包装には、ガラス・合成樹脂・紙・ゴム等の材質が使用されていますが、以下の3つの観点からポジティブリスト制度の対象は合成樹脂となりました。
① 様々な器具及び容器包装に幅広く使用さえ公衆衛生に与える影響を考慮
② 欧米等の諸外国においてポジティブリストの対象とされていること
③ 業界団体による自主管理の取組実績があること
今後はこのリスト対象は合成樹脂以外にも増えていくこともあると思われますが、現時点ではこの合成樹脂だけとなっています。

2:経過措置に関して

今後の食品用器具・容器包装には合成樹脂を使うことは分かりましたが、現行の容器等にはガラスや紙といった合成樹脂以外の材質も使用されています。では一体これらはどうなるのか?という疑問が生じます。

いきなり法律が変わったからすべてがダメになるというのはなく、経過措置が適用されます。経過措置とは、法令・規程の類の改正で、ある一定期間は新らたな規定を緩和適用して、新しい秩序への移行を滑らかにする扱い方です。最近では消費税税率引上げ時の総額表示義務の話でもこの経過措置がありました。

これらは、現在認められている(その製品がこの改正食品衛生法の施行日=2020年6月、より前に製造等されていた器具又は容器包装と「同様のもの」であることを説明することで、その施行時に既に流通している製品と同じ場合には、規格が未整備の物質も使用可能となります。

これは今回のポジティブリストは従来のネガティブリストの上乗せ規制という考え方になっています。そしてこの経過措置は2025年5月までなっています。

一般社団法人食品経営支援協議会では、このHACCPへの理解を深めるためのマイスター習得セミナーを含めた様々研修やセミナーをご提供しています。お気軽にご相談ください。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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