食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は消費税とインボイス制度をご紹介します。 

 

みなさん、こんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)理事の秋島  一雄です。前回のブログでは202310月から導入されるインボイス制度での課税事業者の対応をお伝えしました。今回は免税事業者がどうすれば良いか、という逆の視点から考えてみます。

1:免税事業者の判断(インボイス発行事業者になる・ならない)

免税事業者がインボイス発行事業者に「なる・ならない」の選択は自由です。発行事業者になると課税事業者なので消費税を納めなければなりません。一方、発行事業者にならないと消費税は納める必要はありませんが、販売先が仕入税額控除の要件であるインボイスが入手できない、といった取引先に不利益を生じさせることになります。
もし、販売先が仕入税額控除は必要ない相手(つまりインボイスが不要)だけであれば、免税事業者のままでも構いません。例えば、学習塾や理容店など消費者だけを対象にした事業相手も免税事業者、もしくは簡易課税選択事業者などがその具体例になります。
しかし実際には、さまざまな取引先が存在し、相手が課税事業者である個人事業主もいる中での事業運営が一般的なので、相手はインボイスが必要になるケースが多いと思います。そうなると相手に不利益を生じさせることは、営業上得策とは言えません。

2:免税事業者がインボイス発行事業者になる場合

インボイス発行事業者は本則課税事業者簡易課税事業者か、いずれかの選択肢がありますが、おそらくほとんどの事業者が簡易課税選択をされると思います。なぜなら、本則課税事業者は売上と仕入のいずれも書類の準備が必要ですが、簡易であれば売上だけで仕入は売上に対してみなし仕入率で計算が可能だからです。また前回お伝えしたように、みなし仕入率は卸業が90%、小売業が80%、飲食業が60%なので、多くの事業者は実態よりも少し多めで、結果として消費税納税額が、有利な面があると思われます。

国税庁「インボイス制度の概要

例えば卸業の場合、9割が仕入に係っているとの前提で計算するので、消費税は売上に係った消費税の1割だけになります。例えば、税抜き売上が900万円で税込み売上が990万円の卸業であれば、みなし仕入率が90%なので、みなし仕入額は810万円となり、結果として消費税納税額は90万円の10%である9万円となります。つまり卸業であればこの9万円を納付すれば、インボイス発行事業者として納税義務は果たしていることになります。

3:免税事業者への経過措置

2023年10月からインボイス制度が導入されますが、いきなり免税事業者から仕入でインボイスがないために仕入税額控除が全額できなくなることはありません。導入後の6年間は経過措置が設けられており、最初の3年(20269月末まで)は80%、次の3年(20299月末まで)は50%、といった仕入税額控除が認められます。

国税庁「インボイス制度の概要

この経過措置は救済策のように思えますが、実際に課税事業者からすれば、多くの取引先はインボイス発行事業者となりそのまま仕入税額控除ができますが、免税事業者との取引には別途集計し、さらに80%もしくは50%といった計算をするという手間増えることになります。採算的には、消費税の20%(のちに50%)のコストアップですが、それ以上に社内の経理担当から面倒なので、避けてほしいとの依頼が実務上は発生するのではないか、と想定しています。

4:まとめ

事業を今まで継続するという視点からすれば、やはり免税事業者はインボイス発行事業者(消費税を納める課税事業者)となって、取引先に対してインボイスを発行する方が良いとの判断になるでしょう。また、インボイス発行事業者になることで、免税事業者が今まで計算していなかった仕入への消費税の控除が受けられます。簡易課税選択でのみなし仕入率での計算は、消費税の納付額が思ったよりも大きくないと思われます。これらを勘案していけば、免税事業者はインボイス発行事業者への登録準備しておくことが賢明と思います。

2023年3月末まで登録期間がありますので、それまでに自社の納税額や事業の継続性や発展性のシミュレーションをおこなって、有利な選択をされることをお勧めします。

一般社団法人食品経営支援協議会では、この食品衛生への理解を深めるための各種セミナーをご提供しています。また、HACCPに沿った衛生管理とその計画の策定支援およびモニタリングを中心とした運用支援をおこなっています。https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

秋島 一雄
一般社団法人 食品経営支援協議会 代表理事
中小企業診断士  / 東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター  / HACCP コーディネーター / 産業能率大学兼任講師

総合商社の営業マンから経営コンサルタントとして独立。中小企業専門のコンサルタントとして、東京商工会議所を含め公的機関にて年間200件以上の経営支援実績がある。また販路開拓・マネジメント・海外展開・創業塾等の研修・セミナーの講師も務め、その現場感覚のある指導でリピーターも多い。

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