食品経営支援協議会の専門家によるコラム。今回は、中小企業診断士の加茂多恵 FMSC講師により、お弁当販売を始める際の衛生管理の注意点について解説します。

 

皆さんこんにちは。食品経営支援協議会(FMSC)講師の、中小企業診断士 加茂多恵です。

緊急事態宣言の発令によって、様々な事業での営業自粛が求められています。特に飲食店を経営されている事業者の皆様は、店内での営業縮小を進め、持ち帰りお弁当の販売などを一時的に行われている方も多くいらっしゃるかと思います。

5月に入ってくると、気温は20度を超える日もでてきます。
「すぐにお召し上がりください」とお昼に販売した商品が、もしも夕食に回ったとしたら……気温が上がってくると、菌が繁殖しやすくなり食中毒などの危険性が高まります。

そこで参考にしていただきたいのが、厚生労働省の「弁当及びそうざいの衛生規範」です。
特に大事な箇所を下記に抜粋しました。

(8) 弁当の調製

① 弁当の主食と副食は、調理パン等を除き、それぞれ別の容器に入れることが望ましい。
なお、主食と副食を同一容器に入れる場合は、主食も放冷後盛り付けすること。
② 次の食品は、6月から10月までの間副食として供さないことが望ましい。但し、盛り付け終了後、4時間以内に販売されるものにあっては、この限りでない。
ア サラダ
イ 卵焼
ウ 切身のハム及びソーセージ
エ 生鮮魚介類の刺身

ここで大事なポイントは、持ち帰り弁当は容器に入れる時には、必ず冷まして入れる(放冷)ということです。
放冷する理由は、食中毒を引き起こす数(10万個)になるまで「菌を増やさない」ことにあります。
まず、熱いまま容器に入れると菌が猛烈に増えます。(猛烈なスピードで菌が増える温度帯は20℃~50℃です。)
また、熱による水滴が容器に上蓋に付き菌が増殖します。(菌が増えるための大好きな環境は、水分と温度です。)

そして特に、上記の②エの「生鮮魚介類の刺身」を入れた時は、必ず要冷蔵(10℃以下)にする必要があります。(保冷剤を同梱して冷やす方法でも可能です。)

その他に気を付けるべき点を下記に記載しておきます。 

 

まずは「菌を付けない」こと

容器への盛付作業、生食の加工作業の際には「使い捨て手袋」の使用は必須です。
まずは、人から、そして食材同志で菌を付けないことです。十分に手洗いをしていたとしても、調理中に垂れてきた髪の毛などを触ったりしてしまったら、意味がありません。盛りつけ以降は、菌を減らす工程である「加熱」が行われませんので、特に菌を付けないことが重要です。

お弁当容器を仕入れるとともに、使い捨て手袋も十分に用意し、肉、魚、野菜などの食材ごと、また、生ものと加熱食材ごとなど、手袋を使い分けましょう。

 

「菌をやっつける」加熱と、「菌を増やさない」冷却の両方を合わせて考える

持ち帰り弁当を提供する際は基本的に作り置きをして提供すると考えられますので、加熱をした後の冷却も合わせて考える必要があります。
まず、加熱を十分に行うには、「中心温度まで加熱していること」が必要です。
一度に調理する揚物や焼き物などは、「一番ピースの大きなもの」色・状態などを目視で確認したり、いつもよりも多めに加熱するようにしましょう。
また、冷却の仕方はお店の設備のできる範囲で構いませんが、扇風機や冷却水を使うなど、なるべく早く冷ますことを心がけましょう。

 

惣菜特有の管理

加熱しない惣菜、特に生野菜サラダなどを提供する場合、保存温度と時間によっては、水洗いだけでは殺菌が不十分な可能性があります。その場合、次亜塩素酸ナトリウム希釈液での殺菌が考えられます。

ポイントは二つ、
・次亜塩素酸ナトリウム希釈液は食品添加物として認められている製品を使うこと
・次亜塩素酸ナトリウム希釈液に浸した後、十分に真水で洗い流すこと

必須の工程ではありませんがお弁当での販売を専門としているところは、こういった処理が加えられているため、数時間の保存が効くようになっています。

 

■もし問題が発生してしまったら

注意をしていたとしても、万が一、お客様が持ち帰った後に問題が発生した場合、その商品だけでなく、その日販売した他の商品にも影響がある場合があります。その場しのぎの解決ではお店自体の信用にも関わりますので、保健所への連絡は怠らないようにしましょう。その場合、持ち帰り弁当自体の保存(検食)も必要です。

 

■食品表示は必要?

消費者庁「加工食品品質表示基準Q&A(弁当、惣菜関係)によくある質問がまとめられています。
店内で弁当・総菜を作り、その場で容器包装に入れて販売する場合は、アレルゲンや原材料・添加物、賞味期限・保存方法等の表示義務はありませんが、それは販売時に口頭で直接説明ができるということが、前提条件となっています。
アレルギーや原材料について質問を受けた場合は、きちんと答えられるようにしておきましょう
また、外部から仕入れたものを容器に移し替えるなどして販売する場合には、すべての表示義務は発生しますので、注意してください。

一般社団法人食品経営支援協議会では、中小企業診断士も多く所属しており、経営に関するご支援が可能です。大変な時期を乗り越えるために、まずはお気軽にご相談ください。
https://fmsc.or.jp/contact/

執 筆 者

加茂 多恵
一般社団法人食品経営支援協議会 講師
中小企業診断士  / HACCPコーディネーター  / JGAP指導員

立ち飲み居酒屋から二つ星レストランまで、様々な飲食店を経験。調理・接客をはじめ、企画から現場運営に関わる、飲食店の総合的な見識を持つ。

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